ゼップバウンドとマンジャロは、同じ成分で何が違う?
- 2つの薬の成分は、どちらもチルゼパチドです。
- 分かれるのは「何の病気に使うか」です。マンジャロは2型糖尿病の薬、ゼップバウンドは健康障害をともなう肥満症と、一部の睡眠時無呼吸症候群の薬です。
- 日本肥満学会は、別々の臨床試験で効果と安全性を確かめて世に出た、別の製剤だと説明しています。
違いは5つの点に出る
- 承認の日付:マンジャロは2022年9月26日に、ゼップバウンドは2024年12月27日に承認されました。
- 発売の時期:マンジャロは2023年4月から(7.5mg以上の規格は6月から)、ゼップバウンドは2025年4月からです。
- 対象の病気:マンジャロは2型糖尿病のみ。ゼップバウンドは条件つきの肥満症と、BMI27以上の中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群です。
- 使える医療機関:マンジャロには施設の決まりがありません。ゼップバウンドは、最適使用推進ガイドラインで施設と医師の条件が決められています。
- 使える期間:マンジャロには上限の期間がありません。ゼップバウンドの肥満症での使用は、ガイドラインで最大72週間です。
なぜ同じ成分なのに、別の薬になっている?
薬は、成分だけでなく「どの病気に効くか」を試験で確かめ、その病気ごとに承認されます。
マンジャロは、2型糖尿病の人を対象にした試験をもとに承認されました。ゼップバウンドの肥満症の承認には、日本人の肥満症の人(糖尿病のある人は除く)を対象にしたSURMOUNT-Jなどの試験が使われています。
SURMOUNT-Jでは、食事と運動の指導を受けながら72週使い、体重の変化は10mgで−18.4%、15mgで−22.6%でした。偽薬の人たちは−1.8%です。これは条件をそろえた治験の数字で、誰にでも同じように出るという意味ではありません(試験の数字の読み方)。
量の決まりを並べる
| 量の段階 | マンジャロ(2型糖尿病) | ゼップバウンド(肥満症) |
|---|---|---|
| 始め | 週1回2.5mgを4週間 | 週1回2.5mgから |
| 上げ方 | 4週後に5mgへ。その後は4週間以上あけて2.5mgずつ | 4週間ごとに2.5mgずつ上げる |
| 基本の量 | 週1回5mg | 週1回10mg |
| 幅 | 15mgまで | 5mgまで下げる、または15mgまで上げる |
ゼップバウンドを睡眠時無呼吸症候群に使う場合、基本の量は15mgです(合わない場合は10〜15mg)。どちらの薬も、少ない量から段階的に上げていく点は同じです。
肥満症で対象になるのは、どんな人?
ゼップバウンドの電子添文では、まず次のどれかがあることが前提です。
- 高血圧
- 脂質異常症
- 耐糖能障害(2型糖尿病、耐糖能異常など)
そのうえで、食事療法と運動療法で十分な効果が出ておらず、さらに「BMI35以上」か「BMI27以上で、肥満に関連する健康障害が2つ以上」のどちらかに当てはまる人に限られます。
注意したいのは、書類によって言葉が少し違うことです。使い方を定めた最適使用推進ガイドライン(2026年5月改訂)では、前提の病気が「高血圧、脂質異常症又は2型糖尿病」のままです。実際にどちらで判断するかは、診察する医師に確かめてください。BMIの数字はBMIと条件の照らし合わせで確かめられます。
睡眠時無呼吸症候群にも使える?
2026年5月の電子添文の改訂で、中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群が効能に加わりました。中等症以上とは、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI)が15以上の状態です。ただし、BMIが27以上の人に限られます。
マンジャロには、この効能はありません。
どこの医療機関でも処方できる?
ゼップバウンドを肥満症に使えるのは、ガイドラインの条件をすべて満たす医療機関です。主なものを挙げます。
| 条件の種類 | 中身 |
|---|---|
| 診療科と保険 | 内科、代謝内科、糖尿病内科、内分泌内科、循環器内科のいずれかを掲げる保険医療機関 |
| 医師 | 日本内分泌学会・日本糖尿病学会・日本循環器学会のどれかの専門医で、関連する診療に5年以上の経験がある常勤医が1人以上 |
| 施設の認定 | 学会の教育研修施設であること |
| 栄養の指導 | 常勤の管理栄養士が指導し、記録を残せる体制 |
| そのほか | 薬の情報を管理する体制と、副作用にすぐ対応できる体制 |
2026年5月の改訂では、心理的なケアやサポートが必要だという一文も加わりました。
患者の側にも条件があります。その医療機関で6か月以上、食事療法と運動療法を続けても十分な効果が出ていないことです。この間、管理栄養士の栄養指導を2か月に1回以上受けます。美容目的の自由診療の施設や、オンラインだけの診療所は、施設の条件の外にあることが多いと考えられます。
使える期間と、やめる目安は?
ガイドラインでは、ゼップバウンドを肥満症に使えるのは最大72週間です。
- 毎月、体重などを確認する
- 3〜4か月たっても良くなる傾向がなければ、中止する
- 十分に体重が減った場合は、72週を待たずに中止を考える
やめた後の体重の変化はやめたらどうなるで扱っています。
「保険が効く」という宣伝をどう見るか
厚生労働省の医療広告の事例集には、自由診療なのに保険診療だと思わせる書き方が、不適切な例として載っています。「GLP-1製剤が保険適用になりました!」のような表現です。
保険の対象になりうるのは、ゼップバウンドを上の条件の中で使う場合に限られます。マンジャロを痩せるために使うなら、保険の対象にはなりません。
質問と答え
2つの薬を同時に使ってもいいですか?
いいえ。成分が同じなので、マンジャロの電子添文もゼップバウンドのガイドラインも、一緒に使わないよう求めています。ほかのGLP-1受容体作動薬との併用も避けるとされています。
薬の公定価格(薬価)は同じですか?
違います。2026年8月の薬価基準の一覧では、2.5mgの1キットでマンジャロが1,443円、ゼップバウンドが3,067円です。マンジャロは2026年8月1日に約25%引き下げられました。薬価は保険の値段なので、自由診療の値段とは関係ありません(値段と定期契約)。
ゼップバウンドは痩せたい人なら誰でも使えますか?
いいえ。ガイドラインは、対象の肥満症以外で痩身やダイエットのために投与してはならないと書いています。前提の病気、BMI、6か月以上の食事・運動の治療、施設の条件がそろう必要があります。
- マンジャロ皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第11版)|PMDA(2026-09-29確認)
- ゼップバウンド皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-09-29確認)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド)~肥満症~(令和8年5月改訂)|PMDA(2026年5月)
- 肥満症治療薬の安全・適正使用に関するステートメント|日本肥満学会(2025年4月10日改訂)
- Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(5):384-396(2025年)
- 薬価基準収載品目リスト(令和8年8月13日適用)注射薬|厚生労働省(2026年8月)
- 市場拡大再算定及び持続可能性特例価格調整の対象品目について(中医協 総-4-3)|厚生労働省(2026年5月13日)
ここに書いているのは公的な資料の要約です。あなたの体に合うかどうかの判断はできません。使い始める・中止する・量を変える前に、処方を受けた医師か薬剤師に確かめてください。医療機関の紹介や薬の販売は行っていません。