チルゼパチドの試験の体重の数字を、条件とセットで読む
- よく引用される「約2割減」は、肥満症と診断された人が、食事と運動の指導を受けながら72週続けた試験の平均値です。
- 日本人の試験(SURMOUNT-J)では、72週後の変化はプラセボ群が−1.8%、10mg群が−18.4%、15mg群が−22.6%でした。
- 20%以上減った人は10mg群で44.1%、15mg群で66.2%です。半数前後の人は2割に届いていません。
- マンジャロの承認は2型糖尿病の治療だけです。試験の数字は、痩せる目的で自費で使ったときの結果を示すものではありません。
Q. 試験ごとに、参加した人と期間はどう違う?
| 試験の名前 | 参加した人 | 続けた期間 | 結果の単位 |
|---|---|---|---|
| SURMOUNT-J試験 | 日本人で肥満症と診断された人。2型糖尿病の人は入っていない(解析は225例) | 72週 | 体重の変化率(%) |
| SURMOUNT-1試験 | 海外が中心の肥満の人。2型糖尿病の人は入っていない(2,539例) | 72週(最初の20週は量を上げていく期間) | 体重の変化率(%) |
| 国内の単独療法試験(マンジャロの添付文書に掲載) | 日本人の2型糖尿病の人。比べた相手はデュラグルチド | 52週 | 体重の変化量(kg) |
SURMOUNT-Jは、肥満症の薬ゼップバウンドの承認のもとになった試験です。マンジャロそのものの国内試験は、2型糖尿病の人が対象でした。%とkgは物差しが違うので、横に並べて大小を決めることはできません。
Q. 用量ごとの平均の変化は?
| 群 | SURMOUNT-J(72週) | SURMOUNT-1(72週) | 国内の2型糖尿病の試験(52週) |
|---|---|---|---|
| 対照 | プラセボ −1.8% | プラセボ −3.1% | デュラグルチド −0.5kg |
| 5mg | この群はない | −15.0% | −5.8kg |
| 10mg | −18.4% | −19.5% | −8.5kg |
| 15mg | −22.6% | −20.9% | −10.7kg |
SURMOUNT-1の値は論文の抄録にあるものです。最適使用推進ガイドラインには、一部の施設を除いて計算し直した別の値(5mg −16.5%、10mg −21.9%、15mg −22.9%、プラセボ −3.3%)が載っています。引用するときは、どちらの値かを添える必要があります。
どの試験でも、最初は週1回2.5mgで始め、段階を踏んで量を上げています。
Q. 何割の人が、どこまで減った?
| 試験と群 | 5%以上減った人の割合 | 20%以上減った人の割合 |
|---|---|---|
| SURMOUNT-J プラセボ | 21.2% | 0.0% |
| SURMOUNT-J 10mg | 94.9% | 44.1% |
| SURMOUNT-J 15mg | 96.9% | 66.2% |
| SURMOUNT-1 プラセボ | 35% | 3% |
| SURMOUNT-1 5mg | 85% | (抄録に記載なし) |
| SURMOUNT-1 10mg | 89% | 50% |
| SURMOUNT-1 15mg | 91% | 57% |
SURMOUNT-Jの15mg群でも、3人に1人ほどは20%に届いていない計算です。一方、プラセボ群でも5%以上減った人が21.2%(SURMOUNT-J)、35%(SURMOUNT-1)いました。食事と運動の指導そのものにも変化を生む力があるということです。平均値を見ても、自分がどのあたりに入るかはわかりません。
Q. 体重の数字と一緒に見るべきものは?
| 見る点 | 試験で報告されたこと |
|---|---|
| 有害事象 | SURMOUNT-Jでは10mg群84%、15mg群86%、プラセボ群69%。多くは吐き気や便秘などおなかの症状 |
| 便秘と吐き気 | ゼップバウンドの添付文書によると、SURMOUNT-Jの15mg群で便秘23.4%、悪心22.1% |
| 有害事象による中止 | SURMOUNT-1で5mg群4.3%、10mg群7.1%、15mg群6.2%(プラセボ群2.6%) |
| やめた後の体重 | SURMOUNT-4では、36週使ってからプラセボに替えた群が次の52週で+14.0%。使い続けた群は−5.5% |
| 減った体重の中身 | SURMOUNT-1のDXAサブ解析(160例)では、減った分の約75%が脂肪、約25%が筋肉などの除脂肪 |
DXAサブ解析の著者の多くはリリーの社員です。米国の4学会による共同勧告は、GLP-1系の薬を使う間は、筋力トレーニングと適切な食事で筋肉と骨を保つことを優先するよう求めています。詳しくは副作用のページとやめたときのページにあります。
Q. 思ったほど減らないときは?
試験の数字は、誰にでも同じ結果が出ることを約束するものではありません。そのうえで、処方した医師と次の点を一緒に見直してください。
- 今の量は何段階目か。添付文書では、2.5mgは最初の4週間だけの量で、その後は週1回5mgを続けます。増やすときも4週間以上あけて2.5mgずつで、上限は15mgです。
- 決めた曜日に打てているか。打ち忘れたときは、次の予定まで72時間以上あれば気づいた時点で打ち、72時間より短ければその回は飛ばします。
- 食事療法と運動療法が続いているか。どの試験も、指導を受けながら出た結果です。
- 体重に影響するほかの病気や薬がないか。
ゼップバウンドを保険で使う場合、最適使用推進ガイドラインは、毎月体重などを確かめ、3〜4か月たっても改善の傾向が見られなければ投与をやめるとしています。投与できるのは最大72週です。
マンジャロの添付文書も、量に応じて体重が減るため増量の必要性は慎重に判断すること、減りすぎたときは量を減らすか中止を考えることを求めています。量を自分で上げたり、1回に2本打ったりはしないでください。
質問と答え
試験と同じくらい減ると考えてよいですか?
そうは言えません。試験に参加したのは、肥満症と診断されたなど決まった条件を満たす人で、食事と運動の指導も受けていました。条件が違えば結果も変わります。マンジャロの添付文書には、使い始めのBMIが23未満の人での有効性と安全性は検討されていない、とも書かれています。
5mgのまま続けているのは、量が足りないからですか?
添付文書では、週1回5mgが続けて使う量(維持用量)です。5mgで効果が十分でない場合に限って、4週間以上の間隔をあけて増やせます。増やすかどうかは処方した医師が決めます。
やめると体重はどうなりますか?
SURMOUNT-4では、36週の導入期間に平均−20.9%となった人を2つに分けました。その後の52週で、使い続けた群は−5.5%、プラセボに替えた群は+14.0%でした。導入期に減った分の8割以上を保てた人は、続けた群で89.5%、替えた群で16.6%です。詳しくはやめたらどうなるをご覧ください。
- Kadowaki T, et al. SURMOUNT-J. Lancet Diabetes Endocrinol. 2025;13(5):384-396(2025年)
- Jastreboff AM, et al. Tirzepatide Once Weekly for the Treatment of Obesity. N Engl J Med. 2022;387(3):205-216(2022年)
- Aronne LJ, et al. SURMOUNT-4. JAMA. 2024;331(1):38-48(2024年)
- Look M, et al. SURMOUNT-1 DXAサブ解析. Diabetes Obes Metab. 2025;27(5):2720-2729(2025年)
- 米国4学会の共同勧告(GLP-1受容体作動薬使用中の栄養). Am J Clin Nutr. 2025;122(1):344-367(2025年)
- 最適使用推進ガイドライン チルゼパチド(ゼップバウンド)~肥満症~(令和8年5月改訂)|PMDA(2026年5月)
- ゼップバウンド皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第6版)|PMDA(2026-09-29確認)
- マンジャロ皮下注 電子添文(2026年9月改訂 第11版)|PMDA(2026-09-29確認)
ここに書いているのは公的な資料の要約です。あなたの体に合うかどうかの判断はできません。使い始める・中止する・量を変える前に、処方を受けた医師か薬剤師に確かめてください。医療機関の紹介や薬の販売は行っていません。